夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)の原因を知る

いったん眠ったのに、夜中に何度も目が覚めて、再び眠るのに時間がかかる症状を中途覚醒といいます。この症状に悩む高齢者の方が、病院を訪れる件数は年々増加傾向にあります。
1晩に2回までの目覚めであれば、病的ではありません。また、目覚めた後にすぐに眠れるようなら問題ありません。しかし、目が覚めた後に寝付くことができないであったり、一晩に何度も目が覚めてしまうようであれば「中途覚醒」という不眠の症状かもしれません。

中途覚醒は睡眠障害のなかでも特に多いタイプで、日本では成人の15%が中途覚醒の症状を経験していると言われています。
特に高齢者に多くみられる症状で、60歳以上になると20%以上の人が「夜中に目が覚める」という症状を訴えています。

夜中に目が覚める(中途覚醒)は、眠りが浅いレム睡眠のときに起りやすい

私たちは、1晩のうちに約90分のサイクルで数回浅い眠り「レム睡眠」深い眠り「ノンレム睡眠」を繰り返し行っています。レム睡眠とノンレム睡眠はどちらにも大切な役割があり、欠かすことができません。

レム睡眠の主な役割…脳の睡眠、成長ホルモンの分泌、免疫機能増加
ノンレム睡眠の主な役割…身体の睡眠、記憶の固定・消去・学習、報処理

夜中に目が覚める(中途覚醒)は、眠りが浅いレム睡眠のときに起りやすいと言われています。

夜中に何度も目が覚めてしまう中途覚醒の原因は様々なものが考えられ、年齢的な体の衰えや、精神的なストレスなど複合的に影響していることもあります。
ここでは代表的な3つの原因をご紹介します。

【1】自律神経の不具合(ストレス)

寝つきが悪い(入眠障害)の原因にも挙げられますが、自律神経の不具合は夜中に目が覚めてしまう原因にもなります。
自律神経には、活動モードの交感神経休息モードの副交感神経があり、それぞれシーソーのように片方が働けば、一方は休むという形で我々の無意識の部分で動いています。
眠っている間は本来休息モードである副交感神経が優位となっているはずですが、何らかの原因で交感神経が優位になっていると、眠りの浅いレム睡眠の間に目が覚めてしまうということにつながってしまうのです。

精神的なストレスや日常で感じているイライラ、不安などは脳を興奮させ、夜中に目が覚める交感神経を優位にしてしまいます。また、お休み前の強い光や辛すぎる食事、カフェイン・ニコチン・アルコールなどの刺激物等、生活習慣も自律神経の働きに関係してきます。

自律神経の働きは、夜寝る時だけの問題ではなく、朝起きてから夜休むまでの生活すべてが影響してくると言われています。夜寝る時に休息モードの副交感神経が機能しやすくなるためのポイントもありますので、ぜひ活用してみて下さい。

【2】夜間頻尿

私寝つきはよいのに、夜中にトイレに行きたくなって何度も目が覚めてしまう状態を、夜間頻尿と呼びます。これは、膀胱の筋肉が衰え、少量でも尿意を感じることが原因アルコールや水分を寝る前に沢山飲む生活習慣も影響してきます。
40歳を過ぎるとこの「頻尿」症状が増え、高齢者になるともっと増えていきます。男性に多い症状のように思われがちですが、実際には男女差はあまりないと言われています。

トイレに起きてすぐ眠れるのであれば良いのですが、一度目が覚めると再び眠りにつきにくいという方もいらっしゃいます。何度も目が覚めてしまうと眠りの質はどんどん悪化し、睡眠時間も削られてしまいます。

夜間頻尿は(高血圧や腎機能障害など)体から発せられる危険信号の場合もありますので、気になる方は医療機関に相談してみることをお勧めします。

【3】睡眠時無呼吸症候群

睡眠時に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群が、夜中に目が覚める原因となっているケースもあります。

睡眠中は全身の筋肉がリラックスしていますので、舌や喉の周りも緩んで落ち込み空気の通り道である気道を狭くします。その際に、出入りする空気が振動することで音がでるのがいびきです。このいびきが一定のレベルを超えると、呼吸が一時的に止まってしまう症状が起こり、夜中に睡眠を中断したり、質の良い眠りがとれず朝頭がガンガン痛い、などと言った不快な症状につながります。

いびきは年齢とともに増え、60歳以上では男女とも約半数近くが1晩に1回はいびきをかくといわれています。

いびきをかいていても呼吸がしっかりとできていれば、健康上は問題ないと言われています。しかし昼間に耐えられないほどの眠気に襲われる人は睡眠中に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群という病気の可能性もあります。
「1晩に10秒以上呼吸が止まった状態が30回以上繰り返される」か「1時間に5回以上呼吸が止まる」と睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

睡眠時無呼吸症候群は、肥満傾向の人、あご周りが小さい人など、気道を狭くしやすい条件の人は注意が必要です。

目が覚めても眠れないことを気にし過ぎないことも大切

夜中に目が覚めても、またすぐに眠りに戻れるようなら大きな問題にはなりません。しかし、なかなか寝つけないで睡眠時間が削られてしまうようだと、日中の活動や健康に支障をきたすので問題となってきます。
まずは途中で目が覚めてしまう理由を把握していくことが第一歩です。思い当たる原因がない場合は、知らず知らずのうちに心身がストレスをためてしまっていることも考えられます。

夜中に再び眠りつけずもんもんとしてしまうときは、一度起きて自分の好きなことを少しだけしてみる…という切り替えが効果的な場合も。好きな音楽やTV録画を楽しんだり、読みかけの小説をもうちょっと読んでみたり、好きな飲み物をちょっと飲んでみるとか、なんでも構いません。度が過ぎると、本格的に覚醒して目が覚めてしまうので「ほんのちょっと」というさじ加減に気を付けましょう。
目が覚めてしまう原因に対処すると同時に、眠れないことを気にしすぎないというバランスも自律神経を安定させるために大切です。