朝早く目が覚める早朝覚醒は、年齢の問題とうつ病の可能性を考える

早朝覚醒…予定よりかなり朝早く目が覚めてしまうこと

朝、「○時ごろまでは寝たい」と思っている1~2時間前に目が覚めてしまい、その後スムーズに眠りに戻れない状態、眠れたとしてもウトウト程度で深い眠りに入れない状態、これらを早期覚醒と呼びます。
早期覚醒は不眠の1種で、日本では成人の約8%がこのタイプの悩みを経験しています。不眠症の代表的な症状「入眠障害(なかなか寝付けない)」と比べ、高齢者に多い症状として知られています。さらに、女性よりは男性に多く見られるのも、この早期覚醒の特徴です。

気を付けていただきたいのが、年齢に限らずうつ病の初期症状としても、早期覚醒が見られるという点。明け方、妙に早く目が覚めることが増えた…というような場合は、以下でご紹介する“早期覚醒の原因”をチェックしてみて下さい。

【1】年齢を重ねることによる生理的な睡眠時間の減少

朝早く目が覚める「早期覚醒」の症状は高齢者によく見られます。個人差がありますが、年齢とともにレム睡眠、ノンレム睡眠が減り、睡眠時間が短くなるのは生理的な現象で、避けることができません。


このことは日常の活動量の低下が大きく影響しています。年齢とともに活動量が減っていき、日中あまり動かないでいると、いざ夜になって寝ようとしても休息モードへの切り替えがうまく行われず、ぐっすりと眠れなくなるのです。

また、「昔はよく眠れたのに…なぜ!?」「今夜も眠れないかもしれない…」という不安や焦りが眠れない状態に輪をかけ、交感神経を緊張させてしまい、体を覚醒方向へと導くともいわれております。
対策として最も有効なのが、日中の活動量を増やすことです。年齢を重ねていても、体を動かす仕事や趣味に勤しんでいる方は眠れない悩みとは無縁な場合も多いのです。

【2】体内時計の前倒し

私たちの体には、日が昇ると目が覚め、日が沈んで夜になると眠たくなるという体内時計が元々備わっています。しかし、先にお伝えしたような年齢による生理的な睡眠時間の減少や、生活習慣の変化によって、私たちの体内時計は狂いやすくなってしまいます。

朝早く目が覚めるとそのままじっとしていられず、夜が明けていないにも関わらず家事や運動など活動しはじめると、通常よりも早めに睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が始まり、夜の眠気も早めに前倒しになってしまいます。そして、翌朝も朝早くから目が覚めるという悪循環に…このように夜眠りに入る時間と朝目が覚める時間が慢性的に前進してしまう状態は、「睡眠相前進症候群」と呼ばれ、これも睡眠障害のひとつになります。そして同じく高齢者に多いのが特徴です。
(逆に、寝つきが悪く、起床時間が遅くなり慢性的な夜型人間になる「睡眠相後退症候群」という睡眠障害もあります。)

体内時計は、強い光(2,500ルクス以上)に反応する特徴があります。前倒しされた体内時計を戻していくには、朝早く目が覚めたときにはできるだけ強い光を見ないこと(部屋を薄暗くしておく)、眠気が強くなる夕方には逆にしっかりと部屋を明るくして光を取り込むことなど、目から受ける光のコントロールを行うことがポイントになります。

【3】精神的な問題(うつ病との関連)

物事に興味がなくなったり、何に対してもやる気が起こらない、落ち込みがちである…といったことが起こってきた場合は、早期覚醒の原因としてうつ病が潜んでいる可能性もあります。

うつ病は一生のうちで、10%程度の人が経験すると言われ、割と起こりがちな心の病です。うつ病は脳内の神経伝達物質の働きが悪くなったり、ストレスや体の病気、環境の変化など、様々な要因が合わさって症状が現れると言われています。

うつ病が原因による早朝覚醒の場合、うつ症状の緩和とともに、不眠の症状も改善していくと言われていますので、気になる方は医療機関の受診をおすすめいたします。

普段の生活習慣を見直すことで症状を和らげることも

体が「もう少し眠りたい」と欲しているのに、十分に眠れず目が覚めてしまう早期覚醒。日中眠くなるなどの支障が出たり、夜遅くまでの仕事で寝る時間がそもそも遅かったりする場合、早く目覚めてしまう症状はとても辛いものです。
年齢とともに変化していく眠りの質と上手く付き合うことも大切ですが、普段の生活習慣を見直すことで(浴びる光のコントロールなど)、不眠の症状を和らげることもできます。そのためにも、まずは何が早期覚醒を引き起こしているのか、その原因を自覚しておくことも大切かもしれません。